Octave~届かない恋、重なる想い~
『結子へ
十年間の片思いが実って、本当に良かったね。
結子のまっすぐな想いが、雅兄に届く日が絶対来るって信じていたよ。
雅兄は怒ると怖いけど、とても心の広い、優しい人なの。
どうか、雅兄を幸せにしてあげてください(あ、逆か・笑)
雅兄へ
航兄と一緒にちしま学園の悪ガキを抑えつけ……いえ、厳しくも温かく面倒を見てくれてありがとう。
二人の立派なお兄ちゃんのお蔭で、私達学園生も社会で活躍できるんだっていう、目標がもてたの。
雅兄も十年間、結子のことを待っていたんでしょう?
どうか、結子を信じて素敵な「自分の家庭」を作り上げてください。
前島 博武・千花(旧姓・齋藤)』
さらに、書き切れなかった追伸が、ハガキの隅っこに押し込まれていた。
『親友の結婚式だからどうしても行きたかったんだけど、出産予定日直前なので……ごめんなさい。
友人代表の挨拶、したかったな……。結子の花嫁姿と、やっと手に入れた結子を溺愛してるであろう雅兄を眺めたかったよ』
最後の一文が千花らしくて笑ってしまう。
溺愛とは程遠い新婚生活を送る身としては、千花が本当に羨ましかった。