Octave~届かない恋、重なる想い~
お父さんとお母さんは、ただ私の幸せと、できれば孫を抱かせて欲しい……そう願っている。
弟、そして伯父をはじめとする親族は、雅人さんがしっかりとした地盤を築き、地域の安定のために尽力できるよう、サポートして欲しいと願っている。
千花は私の片思いの成就を祝福し、雅人さんが幸せな「自分の家庭」をもてるようになることを願っている。
招待状を出したほとんどの人は、私達の結婚生活と雅人さんの議員活動を応援してくれている。
だけど、掲示板に悪意のある書き込みをする人達は、私達が少しでも不幸になればいいと願っている。
自分の生活には全く関係のない、私達の不幸を『メシウマ』などと言って喜ぶつもりなのだろう。
悲しいことに、中学校の教員になってからというもの、ネットスラングに詳しくなった。
あの頃は、まさか自分達が叩かれる側になろうとは想像もしていなかった……。
そんな人達には負けない。
私はずっと、雅人さんが好きだった。
雅人さんは、私の気持ちが重荷だったかも知れないけれど、こうして我が家のピンチを救ってくれた。
一緒に住むうちに、雅人さんのことがさらに好きになった。
四年後に別れるという契約を不履行にするため、私は千花のメッセージをヒントに、手紙を書いた。