Octave~届かない恋、重なる想い~
そんな些細なことでも、自分の恋心を毎日自覚している。
夫なのに片思いが続いている。でも嫌われてはいない……はず。
ただ、目が合うと視線を外されたり、自分の部屋に籠ってしまうこともあったりするので、自信はないけれど。
最近、変わったことと言えば
「披露宴の予行演習だ」と言いながら、雅人さんがよく手を繋いだり、腕を組んだりするようになった。
近所へ買い物に行くときも、恥ずかしがる様子もなく手を握ってくる。
この間、スーパーで偶然教え子に会った時も、手を繋いだままだったので、私はものすごく恥ずかしかったのだけれど、雅人さんは平然として生徒に笑いかけていた。
恥ずかしいから、せめて知り合いに会った時は手を離してもいいか聞いてみると、
「いや、絶対に離さない。仲良く暮らしていることをアピールできた方が、何かと都合がいい」
そんな風に言われてしまい、ますます体を寄せてくる始末。
外ではスキンシップが増えたのに、家の中では頭を撫でてくれる程度。
このようなギャップが生じる訳は、やっぱりアピールする相手のいない二人きりの時は私に触れることさえ面倒だと考えているのだろうか。
いずれ離婚した時、お互いが傷つかずに済むようにしようという雅人さんなりの優しさだとしたら、私はこれ以上踏み込むことができない。