Octave~届かない恋、重なる想い~
「君は政治家に向いていない。でも、淳史君に地盤を残したい……そうだろ?」
こくんと頷いた。
私が継ぐしかないのだろうか。
「俺からひとつ、打開策を提示させてもらうよ。
君が政治家にならなくても、淳史君に地盤を継がせることができる。
ただし、今の仕事は辞めるしかないな」
「どんな方法ですか?」
そんなにうまい話があるとは思えない。
きっと何か、裏があるに違いない。
すると、雅人さんは私の目をじっと見つめながら、笑顔だった今までとは違う真剣な表情で言った。
「俺と結婚するんだ。俺が『宇佐美雅人』になって、君の代わりに立候補するよ」