Octave~届かない恋、重なる想い~

「君は政治家に向いていない。でも、淳史君に地盤を残したい……そうだろ?」

 こくんと頷いた。

 私が継ぐしかないのだろうか。

「俺からひとつ、打開策を提示させてもらうよ。
 君が政治家にならなくても、淳史君に地盤を継がせることができる。
 ただし、今の仕事は辞めるしかないな」

「どんな方法ですか?」

 そんなにうまい話があるとは思えない。

 きっと何か、裏があるに違いない。

 すると、雅人さんは私の目をじっと見つめながら、笑顔だった今までとは違う真剣な表情で言った。

「俺と結婚するんだ。俺が『宇佐美雅人』になって、君の代わりに立候補するよ」
< 21 / 240 >

この作品をシェア

pagetop