Octave~届かない恋、重なる想い~
「お義父さんを喜ばせるんだろう? 最高のコンディションで臨まないと」
「はい。……お父さん、喜んでくれるでしょうか」
「もちろん。長い闘病生活を耐えて良かったと思うだろうな」
「そうだと嬉しいです」
ここまで話したところで、気が付いた。私、ずっと雅人さんの上にいた!
「ごごごめんなさい! 重たかったですよね! すぐに降ります」
「全然。軽いな。これなら明日、君を抱いて家に入ることもできる」
結婚式のしきたりのことを言っているのだと思った。
今まで、そういったこととは無縁の生活を送ってきたので、びっくりした。
「そうそう、こうやって降ろしてあげることもできる」
「え?」
私を抱きとめた時に回されていた雅人さんの腕が、ぎゅっと力を込めて私の身体を引き寄せる。
抱きしめられたせいで、より一層近くなる二人の距離に戸惑っているうちに、身体がぐるんと半回転した。
私が下で仰向けの体勢になり、面白そうに笑う雅人さんから見下ろされている。