Octave~届かない恋、重なる想い~

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 心配していたお天気にも恵まれ、澄みきった青空が眩しくて目を細める。

 ホテルのエントランスには既に、私達の結婚披露宴の案内が表示されている。

 雅人さんと二人、ブライダル担当の方に挨拶をして、美容室へと足を運んだ。



 着せ替え人形のように何度も着替え、髪形を変え、写真を撮影し、挨拶をして動き回る。

 結婚式は花嫁が主役だというけれど、やはり私達の場合は夫婦二人共に主役なのだろう。

 雅人さんは新人議員として、多くの人との挨拶や会話を誠実にこなしているように見えた。


 涼しげな目元とシャープな顔立ちのせいか、羽織袴姿の雅人さんがとても素敵で、私は自分の鬘を恨めしく思った。

 頭が重たくて、雅人さんを見上げるのが大変だから。

 
 ウエディングドレスは、雅人さんが選んでくれた。

「これを着た結子が見たいから」

 そう言って選ばれたドレスは、シルクとオーガンジーが重なり合ったデザインで、白い薔薇の刺繡が施されたベールが美しく光っていた。

 試着した時に見てもらい、感想を聞いてみたところ

「想像以上。このまま連れて帰りたい」

 などと言われたのを思い出す。人前での雅人さんは、私を溺愛している演技が本当に自然だと感心した。

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