Octave~届かない恋、重なる想い~
「こんな風に、勘が鋭くて気遣いができて頼れるお父さんは、私の自慢でした。
ただ、議員の仕事が忙しすぎるせいか、家を留守にすることは普通の家庭よりずっと多かったと思います。
私と弟の淳史が普段頼りにしていたのは、やっぱりお母さんでした。
お母さんはお父さんの分まで、私達を褒め、叱り、愛情を注いでくれました。
選挙期間中など、お母さんも過労で倒れるほど疲れていたはずなのに、絶対に手抜きをしないお料理とお弁当を作ってくれたのが嬉しかったです。
お父さんが倒れた時、お母さんはつきっきりで看病してくれましたね。先の見えない闘病生活を支え、気丈に振る舞うお母さんを見て、カッコいいなと思いました。
今の世の中、何かと専業主婦は否定されることも多いですが、家事・育児・介護・PTA活動・議員の妻としての活動を精力的にこなすお母さんは、お金ではなく、奉仕する心で社会を豊かにしているかけがえのない存在です。
お母さんの今までの姿は、現在議員の妻になった私の、最高のお手本だと思っています。
いつか、お母さんのような女性になりたい……そのためにも後日、お母さんのレパートリーを習いに行きますので、よろしくお願いします」
そう言って、お母さんを見ると、ハンカチを手に涙を拭いて、必死に笑顔を作ろうとしていた。
両親のそんな姿を見ていたら、私もますます泣けてくる。
でも、ここからさらに伝えたいことは膨らんでいく。