Octave~届かない恋、重なる想い~
花婿からの挨拶
お父さんとお母さんの間に立つ私の前に、淳史が寄ってきた。
「結ちゃん、おめでとう。めっちゃいい手紙だったよ。やっぱ雅人さん、最高だね」
両手を上げて、ハイタッチをする。
淳史はそのまま、すぐ横にいる雅人さんともハイタッチ。
「地味だけど、一途で一生懸命な姉をよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。四年後、楽しみにしてる」
「頑張ります!」
「新郎・雅人さんから、本日ご参列頂きました皆様へ、感謝の言葉をお伝え致します」
頃合いを見計らって、司会者が雅人さんをマイクの前へと案内する。
雅人さんが何を話すのか、私は何も知らない。
私の手紙の内容ももちろん、知らせてはいなかった。
どんな挨拶になるのか気にしつつ、私は母と一緒に並んで立ち、マイクの前に姿勢よく立っている雅人さんをじっと見つめた。
涙でぼやける視界の真ん中で、一礼する雅人さんを捉える。
雅人さんも、まっすぐに私を見ていた。