Octave~届かない恋、重なる想い~
「これでもう、結子も諦めるだろう……そう考えていました。
その後も宇佐美社長から結子の近況を聞いたり、年賀状のやり取りを続けたりすることで、辛うじて結子との繋がりを保っていました。
表向きは急に連絡を絶つと結子が悲しむだろうと考えて……という理由でしたが、本当は私が結子との繋がりを断ち切りたくなかったのです。
この時既に、私は結子に好意を抱いていました」
私の眼を見て、雅人さんははっきりとそれを告げてくれた。
夢じゃないだろうか。雅人さんもあの頃から私を好きでいてくれたなんて。
「結子が大学を卒業し、教員として中学校に勤務していると聞いた時、とても心配しました。
小さくて控え目で、優しすぎるほど穏やかな性格の結子に、やんちゃな中学生の相手が務まるのだろうかと。
でも、彼女は私と結婚するまでの三年間、立派にその職務を全うしました。
優しいだけではなく、真剣に生徒と向き合い、慈しみ、叱り、愛情いっぱいに育てていたのです」