Octave~届かない恋、重なる想い~

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 披露宴と二次会が終わり、身軽になった私達はそのままタクシーで自宅へ戻ってきた。


 エレベーターで二人きりになった時、そっと抱き寄せられて驚いた。

 今までの雅人さんは、二人きりの時には接触することを避けていたから。

 玄関に入り、靴を脱ぐ前に抱きしめられた。


「えっ!?」

「今日からはもう、我慢しない」

「……っ!?」


 疑問が外に出る前に、雅人さんの唇で封じ込められてしまった。

 アルコールの匂いと、今、されていることで、正気を保てなくなりそう。

 そのまま何度もキスされて、座り込んでしまいそうになったところで、身体を横抱きにされた。

 お姫様抱っこのまま、リビングのソファの上にそっと置かれる。


「このまま寝室に連れて行きたいところだけれど、風呂に入りたいだろうし」

「そそそそれって」

「家庭を作るんだろう? 俺達は今『夫婦』という単位だ。『家庭』になるために必要なのは?」

「子ども……ですか?」

「君との子どもだったら、愛することができるって気づいた。だから」

< 230 / 240 >

この作品をシェア

pagetop