Octave~届かない恋、重なる想い~
「まずは新婚初夜。結子が俺の部屋に来た時。断腸の思いで拒絶した。ちょっとでもそういう雰囲気になったら、今後一切我慢できなくなることはわかりきっていたから」
「そう、だったんですか・・・・・・」
「辛かったよ。結子に辛い思いをさせていることも十分わかっていたから、余計に辛かった」
「・・・・・・私、もう、駄目かなって、思って・・・・・・」
思い出してまた涙があふれる。
私の肩に置かれていた手が、背中に回った。
優しく抱擁されたあと、雅人さんの正直な気持ちを聞いた。
「立花さんが泊まりに来た夜も、自分の理性の限界に挑戦していたよ。それなのに結子はあっさり無防備に眠っているし・・・・・・」
「全然、知りませんでした」
「立花さんの方が、俺の忍耐に気づいていたよ。朝、トイレの前でこっそり言われたんだ。『うちが泊まりに来たせいで、昨日の夜は何もできなくなっちゃったんでしょ?』って。曖昧に笑って誤魔化したけど、俺は心の中で叫んだね。昨日だけじゃない、ずっとだ!ってね」
「立花さん・・・・・・鋭いですね」
「結子が鈍いだけだ! 十年も前から俺は結子が好きだ。結子と本物の家族になりたい。『幸せな家族』ってどんなものなのか、教えて欲しい」