Octave~届かない恋、重なる想い~

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 何度も、熱っぽく名前を呼ばれた。

 その度に、愛されている自覚が芽生える。


 全てをさらけ出すことに恥ずかしさを訴えても、聞き入れてはもらえなかった。


「俺だけに見せて。結子の全部」


 こうして身体のあちこちに付けられた印を見て、また羞恥心に苛まれる。

 愛され、翻弄され、涙目になりながら雅人さんの名前を呼ぶ。


「結子の声も好きだ。もっと聴かせて」


 名前を呼ぶ度に、甘く問い返される。

 初めて与えられる感覚。戸惑いと恥ずかしさと痺れるような刺激に、思わず声が出てしまう。


「リラックスして。大丈夫。……好きだから、ひとつになりたい」


 今まで知らなかった、熱を帯びた男の人の眼で懇願された。

 返事の代わりに、大きな身体をぎゅっと抱きしめる。

 これまでとは比べ物にならない、深い衝撃を感じて目を閉じたら。


「俺を見て。今、結子を抱いているのは誰?」

「……雅人さん。私の、夫……」

「そうだ。これからも、ずっと……」



 
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