Octave~届かない恋、重なる想い~
昨日、子ども達が寝静まってから、雅人さんにこう問われた。
「結子、今、幸せか?」
「もちろんです。雅人さんは?」
「幸せだと思う。ただ、怖いよ」
「落選すること、ですか?」
すると、笑って否定された。
「いや、そうじゃなくて。よくある『幸せ過ぎて怖い』っていう感覚があって」
私もそれは、一緒だった。これ以上の幸せはないのではないか、と。だからこそ考えている。
「幸せかどうかは、その人の心の在り方次第です。ささやかな幸せであっても感謝の気持ちを忘れずに、辛いことは人生のスパイスにしましょう」
「そうか……それじゃあ、明日はちょっとスパイシーな一日になりそうだけれど、帰ってきたら甘い味付けを頼むよ、結子」
「任せてください!」
「甘口の結子を今、堪能したくなった」
「……いいです、けど」
「けど、何?」
「明日は大事な日なので、寝坊しない程度に堪能してください」
「……了解」