Octave~届かない恋、重なる想い~
大きな野望

父親の存在

 結局その夜、私は雅人さんからの突然のプロポーズに呆然とするばかりで、主導権は常に雅人さんにあった。


「選挙の公示日までそれほど時間がないのだから、できる限り早めに返事が欲しい」


 そう言われて、頷くしかなかった。
 でも、私の態度には明らかに迷いがあったはず。
 雅人さんは「私」ではなく「宇佐美」の家を継ぐ立場が欲しいだけなのがはっきりしたから。


「……もしかして、結子さんには好きな男がいる?」


 どうして、今更そんな事を聞くの?

 私に好きな男がいたら、自分が婿養子になれないから?
 私がその話にすんなり乗らないのは、好きな相手と結婚できないせいだと考えているの?
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