Octave~届かない恋、重なる想い~
 自分の部屋へ戻って、今日の出来事を振り返ってみた。

 病室で7年振りに見た雅人さんの姿。

 あの頃と変わらない、落ち着いた声。

 そして、今も昔も、私の事はちっとも見ていないということを再確認することになってしまった。

 それなのに、雅人さんと私が結婚?

 彼に利用されているのだと感じる。

 でも、彼の野心を利用しているのは、実は私ではないだろうか。

 私の困った環境をそのまま羨むような人がいて、しかもそれが憧れの人だったとは。

 もう、後戻りはできないのだとしたら、このまま流されてみるのもいいかも知れない。

 その流れが、決して穏やかではない、激流だとしても。
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