Octave~届かない恋、重なる想い~
 少なくとも、雅人さんは私のことを嫌ってはいないはず。

 さすがに嫌いな人間と結婚するなんて考えられない。

 雅人さんは、私の『家』が好きで『職業』も好き。

 いつかそれに『私自身』も加えてもらえるように、努力してみよう。

 そうすれば、この結婚は本物になるのだから。

 シェードを上げると、眩しい朝の光が部屋いっぱいに広がった。

 まるで私の考えを肯定するかのようにその光に包まれて、気分よく動き出す。

 巻き込まれるだけ、ただ傍観するだけの私からはもう、卒業すると決めたのだから。

 自ら激流に飛び込む覚悟を決めて、私はもう一度、大きく伸びをした。
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