Octave~届かない恋、重なる想い~
 勤務時間が終わった。

 それを見計らうかのように、スマホが震える。

 雅人さんからの連絡だった。

 職員室から出て、急いですぐ隣の女子更衣室でこっそり話す。


「もしもし」

『結子さん、仕事終わった?』

「はい、勤務時間は終わりましたけど、まだ少し、来週の準備が残っています」

『じゃあ……6時半に君のアパートへ迎えに行くよ。それまでに仕事を何とか終わらせて欲しい』

「えっ!? 私の部屋、知ってるんですか?」

『昨日、君のアドレス帳から住所がわかった。後はナビで検索するよ。ではまた後で』


 また、有無を言わせず決められてしまった。

 大急ぎで来週の被服実習で使うミシンのチェックを行い、調子の悪いミシンの糸調子を直して、家に帰った。
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