Octave~届かない恋、重なる想い~
 突然、子どもの話が出てきたので驚いた。

 どうして?


「結婚するからには、君に伝えなくてはならない。
 君のお父さんはおそらく知ってると思う。
 君の伯父さんから話を聞いて、ね」


 雅人さんは伯父の会社に、十年以上勤めている。

 当然、伯父は雅人さんの事を色々と知っているだろう。

 私が知らない、色々な事も。


「君と初めて会った時のこと、覚えているかい?」

「はい。10年前、我が家で催された新年会に雅人さんが初めて来てくれて……」

「正月に他人様の家へいきなり行くなんて、普通は有り得ないと思わないか?
 それでも君の伯父さんは俺を連れて行った。
 なぜなら、俺は正月に帰る家がなかったから。
 父も……途中からは母もいない。小学3年の時、俺は児童相談所から児童養護施設に保護されたんだ」
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