Octave~届かない恋、重なる想い~
 すると雅人さんは、さも意外だ、といったような表情を浮かべた。


「それで君はいいのか?」

「え? だって、面倒な事が色々増えますよ」

「確かに、結婚自体は面倒かも知れない。
 でも、そうしないと、俺のような得体の知れない男は、信用してもらえない。
 君と結婚せず、政経塾のような団体や、労働組合から政治家を目指す方法ももちろんある。
 だけど、君の家の地盤は引き継げない。
それに、ギブ&テイクの関係の方が、お互いにとっていいと思わないか?」

「どういう意味ですか?」

「俺は、無償の愛なんていうものを信じない。
 親子でさえ、裏切るのが当たり前っていう環境で育ってるんだ」

「雅人さんは、親から裏切られたと思っているのですか?」
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