Octave~届かない恋、重なる想い~
「ああ、少なくとも父は俺を人間として認めていない。
 母は我が子であることを認めたくなかったらしい」


 淡々と語っているけれど、両親に対して強い怒りと憎しみをずっと持ち続けていたのがわかる。

 それがわかるからこそ……切ない。

 当たり前のように両親から愛されて育った私にとって、家族は絶対に守りたい宝物だから。

 私はこの結婚で、家族を守る代わりに裏切るのではないだろうか。


「だから、君は俺を利用して自分の家を守る、俺は君を利用して政治家の足がかりを得る、というのは理にかなっている」

「そうですけれど……両親を騙すようなことをするのは、嫌なんです」

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