Octave~届かない恋、重なる想い~
「騙してる、なんて思わなければいい。
 君はお父さんと弟を助けるために、好きでもない男と結婚しようとしてるんだ。
 期間限定で親孝行していると考えたらいいんじゃないか?」

 
 そう言って、彼は微笑んだ。

 期間限定の親孝行。

 期間限定の結婚生活。

 でも、その期間が終わったら、私に何が残るというのだろう。

 家族を支えたという、達成感?

 好きな人と夫婦でいられたという、満足感?

 
 ……ううん、夫婦じゃない、仮面夫婦だ。

 でも、私がそれを受け入れたら、私の家族と雅人さんの希望が叶う。

 だとしたら、仮面夫婦でもいいと思えた。
 
 私にとってはそれだけ、家族も、雅人さんも大事な人だったから。
< 58 / 240 >

この作品をシェア

pagetop