Octave~届かない恋、重なる想い~
小さな希望
父の病室で久しぶりに見た雅人さんは、見た目はほとんど変わっていない。
ただ、雰囲気は洗練された大人の男性になっていて、存在感が増したような気がする。
まさか、雅人さんがここにいるとは思いもよらない私は、挨拶するのも忘れて彼の顔を見つめてしまった。
「結子さん、お久しぶりです。しばらく見ないうちに、すっかり綺麗になりましたね」
「あ、わざわざお見舞い、ありがとうございます。ご無沙汰しておりました」
慌てて挨拶する私を、雅人さんもじっと見ている。
10年前のあの頃から、ちっとも伸びなかった身長と、今でも生徒に間違われてしまう童顔が恥ずかしい。
私は、悪い意味でちっとも変わっていないはず。
「いえ、結子さんのお父さんには、若い頃からずっとお世話になっていますので。
……では、そろそろ失礼します」
そのまま病室を出ようとした雅人さんを、父が引き止めた。