Octave~届かない恋、重なる想い~
「結子さんを客観的にご覧になった時、政治家に向いていると思いますか?
 大変失礼ないい方になってしまうかも知れませんが、結子さんは自己アピールが下手です。
 教員採用試験でも、今までずっと二次面接と小論文で不合格になっている、という事は、やはり自己アピールの力が足りないからではないでしょうか」


 雅人さんは私と父を交互に見つめて、はっきりとした口調で言う。

 下手、と言われてしまったけれど、図星なので全く否定できない。

 父も同じ見方をしているらしく、かすかに頷いた。


「政治家にとって、それは致命的です。
 私には、ヤジを飛ばされながら演説する結子さんの姿を想像する事ができません。
 ……弟の淳史君なら、きっとそのヤジを逆手にとってやり返す位の演説ができるでしょうけれど」
< 70 / 240 >

この作品をシェア

pagetop