Octave~届かない恋、重なる想い~
確かに、淳史ならそれができる。

 淳史は小さい頃から父の仕事に興味を持っていて、大学では弁論部に所属している。


「ただ、結子さんの自己アピール力が足りない、という事は、私にとって幸いでした」


 そう言うと、今度はかすかに笑みを浮かべて私を見た。

 まさか、私の代わりに出馬できるから幸いだ、と暴露してしまうの?

 私の不安をよそに、彼はふふっと笑い、言葉を続ける。


「常に控え目で、自分の魅力をアピールすることのない結子さんだからこそ、今まで浮いた話がほとんどなかったのでしょう。
 結子さんの清楚で優しい性格は、一緒にいると安心できます。
 結子さんと同年代の男には、それがまだわからないのでしょう」
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