Octave~届かない恋、重なる想い~
「ほら、結子さん自身も自分の魅力に気付いていないんです。
 だから、他の男に言い寄られる前にプロポーズしました。
 俺と結婚してくれたら、君の悩みを少しでも軽くする手伝いができるから、と言って。
 ……狡いとは思いますが、私は彼女に『はい』と言ってもらいたくて、こんな条件を出したのです」


 ……さすが雅人さん。

 そういう話にしてしまえば、父も納得するだろう。

 娘はそこまで愛されて、結婚するのだと。


「結婚してくれたら、俺が君の代わりに出馬して、淳史君が戻ってくるまで、選挙区を守る。
 そのために、苗字が変わってもいい、と」


 愛のない、4年契約の結婚話が、ここまで人情味溢れる恋愛話になるなんて驚きだった。
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