Octave~届かない恋、重なる想い~
 彼にはきっと、脚本家の才能もあるに違いないと、こっそり考えた。


「その時、結子さんは私の苗字が変わることについて心配してくれました。
 彼女は知らなかったんです、私が孤児であることを」


 それは事実なので、私も大きく頷いた。

 すると、雅人さんは少し声をひそめて、でも、父にも聞き取れる位の大きさで私にこう言った。


「今まで内緒にしていてごめん。
 言えばきっと、偏見の目で見られると思って、打ち明けられなかった。
 嫌われたくなかったんだ」


 切ない表情でそんな事も言われて、脚本家のみならず、俳優としての才能も十分だと思った。

 父はずっと、真剣な目で私たちを見ている。
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