Octave~届かない恋、重なる想い~
 面会時間が終わり、病室を出た。

 時間ぎりぎりまで、何度も雅人さんに頭を下げていたお父さんを見るのが辛かった。

 期間限定の親孝行、と雅人さんから言われたこの計画は、実は無期限の親不孝となるのではないだろうか。

 私にはもう、わからなくなっていた。

 病院内ではやっぱりずっと手を繋がれ、恥ずかしくてちょっと離そうとした途端、今度は繋ぎ方を変えられてしまった。

 いわゆる、恋人繋ぎ。

 もう、自分で解くこともできず、諦めた。

 やっぱり私は、雅人さんにかなわない。

 これも惚れたモノの弱み、というものだろうか。

 回転ドアを二人でくぐり抜けながら、思わずそんな事を考えた
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