Octave~届かない恋、重なる想い~
 末永く、という言葉に反応したのか、雅人さんの表情が一瞬こわばったのを、私は見逃さなかった。

 それを見る限り、雅人さんだって、私の両親に嘘をつくのは不本意なはず。

 どうにかして、嘘から出た実にしよう。

 今の心の痛みを忘れずに、真心こめて雅人さんに接していたら、いつかは……。

 私がこんなことを考えているなんて、きっと隣で運転している人は知らない。

 車はやっと、レストランの駐車場へ入った。


「さて、かなり遅い時間になってしまったけれど、夕食にしよう。
 俺、ここは初めて来たから何がおいしいのか知らないんだけど。
 君のオススメ料理を食べながら、二人の将来について語り合おうか?未来の奥さん」


 未来の旦那様は、楽しそうにそう言った。
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