Octave~届かない恋、重なる想い~
 すると雅人さんは、小さな声で返事をしてくれた。


「気持ちは嬉しいけれど、また今度にしておくよ。
 家に帰って仕事をしたいからね。
 ……誘惑に負けないうちに」


 私は誘惑なんてしていない!
 
 恥ずかしくて首をぶんぶんと思いっきり横に振ると、笑われてしまった。


「今時、中学生でもここまで純情じゃないと思うんだけど。
 ホント、箱入りのお嬢さんだな。
 そこがまた、いいところだと思うけど。
 やっぱりあまりにも慣れてないとおかしいから、最後にもう一度」


 さっきとは違い、部屋の外だというのに、雅人さんはとても自然な表情で、今度も抗議の声を出す前に私の唇を塞いだ。
 
 いつかこれにも、慣れるのだろうか。
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