Octave~届かない恋、重なる想い~
 駅前で演説しようとしていた時のこと。

 他の候補とニアミスしてしまい、少し後に来た私達は、そちらの演説が終わるのを待っていた。

 ……長い。
 もしかしたら、私達がいることを意識して、あえて長く話しているのかも知れないけれど、それにしても長い話だと思った。

 道行く人も、最初少しだけ立ち止まって聞いているのに、話が終わらないと感じるやいなや、みんな足早に立ち去っていく。

 ようやく、他の候補の演説が終わり、お互い挨拶をして、雅人さんの番となった。

 さっきの演説に飽きた人は、候補が変わってもほとんど興味を示さない。

 雰囲気は決して良くない中、雅人さんは笑顔でマイクを握った。


「お疲れのところ、申し訳ありませんが、3分だけお付き合い頂けると嬉しいです」
< 91 / 240 >

この作品をシェア

pagetop