初恋シグナル~再会は恋の合図~
「間に合った……!
今日、湊(そう)ちゃんと試合だって聞いたから、絶対ここだと思って……」
走ってきたらしい彼女は、少し乱れた髪を耳に掛け、弱々しく笑った。
ふんわりとした薄いピンクの花柄ワンピースが、皮肉なくらいに似合っていた。
「……もう二度とくんなって言っただろ?」
「だけど、私やっぱり無理なの。うやむやにしたくないの。
……だって私、今でも」
「彩織!」
強い口調で彩織さんの言葉を遮った辻村くんに、彩織さんはびくりと身体を竦ませた。
「……お願い。ちょっとでいいの、私に時間をください」
「辻村くん、私もちゃんと話すべきだと思う」
初めてふたりの会話に割って入った私に、彩織さんは驚いた顔をした。
一方で辻村くんは、厳しい顔で私を見る。
「気付いてる?
……辻村くん、彩織さんと会った後っていつもと違うんだよ。
気にしてないふりして、本当はそんなことないんでしょ……」
言っていて悲しくなったけど、涙が出そうだなんて悟られないように、声が震えないように、私は必死に言葉を紡いだ。