初恋シグナル~再会は恋の合図~


「……ひどいよ」



思わずそんな呟きが零れると、彩織さんはふるふると首を横に振った。



「ううん。いちばんひどいのは、私。
……だって、言えなかったの。真二くんがメンバーから落ちて落ち込んでるのに、それが自分のせいだって、言えなかった。

……ずっと、隠してたの。私の家がサッカー部に圧力かけてることも。私が真二くんの知らないところで湊ちゃんと会ってることも。

……湊ちゃんと私が、婚約してるってことも」



「……嘘ですよね……?」



そんなこと、できるの?


好きな人が落ち込んで、傷付いて。


それが自分のせいだってわかってるのに、恋人っていう関係を続けられるものなの?


しかも、婚約者が、いるのに……。



「……ごめんなさい」


「……いつ、ばれたんですか」



そう訊くと、彩織さんはびくりと肩を震わせた。



「……高校に入ってすぐに」


「……そうですか」



じゃあ、絶対にレギュラーになれないってわかっていても。


辻村くんは、頑張ってたんだ。


自分を受け入れてくれないチームで。


……頑張ったんだ。


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