初恋シグナル~再会は恋の合図~
旅館に戻るバスに乗りながら、窓の外の移り変わる景色を眺めながら。
私の頭の中では、何度も何度も、彩織さんの話が繰り返し再生されていた。
彩織さんの話を聞いて、どうして辻村くんがあんなに変わってしまったのか、納得することができた満足感なんか少しもなくて。
……私の心を占めているのは、痛いほどの後悔だった。
意識するより先に、目尻からふわりと涙の雫が溢れてくる。
バスは丁度空いていて、いちばんうしろの席に座っていたこともあり、誰も私の涙に気付くことはなかったと思う。
……ぜんぶ、とけてしまえばいい。
痛みも、愛しさも、全部。
涙と一緒に、溶けて流れてしまえばいいのに────。