初恋シグナル~再会は恋の合図~
どんどん近づいていく距離。
ダメだと自分を引き止める理性は、この瞬間だけはまるで消え去ってしまっていた。
……唇がふれるまで、あと、数ミリ。
「……ん……」
もしも彼女が起きていたならその綺麗な瞳も見つめられたのに。
……そんなことを思っていたからかもしれない。
微かな声と共に、彼女がゆっくりと瞼を押し上げた。
どういう状況か理解できていないらしく、ぼんやりとした瞳が、ゆっくりと一度、深く瞬き。
そして、ぐぐっと大きく瞳が見開かれる。
「……え…?」
まっすぐに視線が絡まってハッとしたのは俺の方だった。
驚いたように自分を見る彼女の視線に、急に恥ずかしくなる。
ガバッと慌てて覆いかぶさっていた身体を退け、飛びのいた。
「わ、悪い……っ!」
さっきまで影を潜めていた理性と羞恥心が突然舞い戻って来て、考えるより先にくるりと方向転換をすると、逃げるように長谷川の部屋を後にした。
先生に見つからないように女子部屋から自分の部屋に戻り、そこで落ち着いて更にさっきの自分が信じられなくなっていた。
……あんな、衝動だけに身を任せるようなことをしたのは初めてだ。