初恋シグナル~再会は恋の合図~

分からない、と首を傾げた私に、佐竹くんはふっと笑った。


「馬鹿だろ、って言われた」


「へ」


「ゲーム終わった後。……なんでFWやらないんだ、やっぱり湊はFW向きなのに、って。お前だって本当にやりたいのはここじゃないんだろ、って」



「……怒られてるじゃん」



私がそう言うと、佐竹くんは笑った。



「そ。信じらんないでしょ?怒るとこそこ?って思わず言ってたもん、俺。あんだけ真二のこと見下したこと言って、藤桜から追い出した俺だよ?
……まさか、ポジション転向を薦められるとは思わなかった」


もっと、詰(なじ)られて嫌われて、冷たい視線を向けられる。


……それが普通だと思ってたんだけど。


佐竹くんはそう呟いた。



「でも、それで気付いた。あいつ、本当に藤桜から逃げたわけじゃないんだって。
憎んでるはずの俺にさえ、あんな言葉掛けてくるって、どんだけサッカー好きなんだよ、ってもう笑っちゃったわ」



「今頃気づいたの?」


辻村くんがサッカー馬鹿なことなんて、誰の目からみても明らかじゃん。


< 379 / 424 >

この作品をシェア

pagetop