初恋シグナル~再会は恋の合図~
「……ならいいけど」
「え、仲良くなっちゃダメなの?」
仲良くなる予定はないけど、辻村くんがそんなふうに言うのがなんだか意外で、思わずそう訊き返す。
すると、辻村くんはバツが悪そうな表情をして、
「別に、そういうわけじゃねぇけど……。あいつ、モテるから」
となぜか顔を背けてそう言った。
……モテる?
今の会話の流れでどうしてそうなるの?
私はさらに分からなくなって、首を傾げた。
一瞬私の方を向いた辻村くんと視線が合うけど、辻村くんはすぐにその視線も逸らしてしまう。
「……いや、悪い。何でもない」
「え」
「じゃあ、おつかれ」
私を掴んでいた手をするりと離して、辻村くんは宿舎の方に歩き出してしまった。
辻村くんの言葉の意図がわからなくて、本当は追いかけて話をしたかったけれど、マネージャーはまだ片付けが残っていたのでそれもできず。
私はただ、遠ざかっていく背中を見送ることしかできなかった。