初恋シグナル~再会は恋の合図~
「……頑張ったんじゃないの」
「美涼」
彼女の言葉はどうしてこんなに心に響くんだろう。
「今はあたししかいないんだから、めいっぱい泣けばいいわ」
後ろからぎゅっと抱きしめるのは、子供のころから美涼が俺を慰めるときのいつもの優しさ。
そこに男女のときめきとか、そういうのはなくて。
ただただ、温かい、居心地のいい、幼なじみというだけで。
「……さんきゅ」
「ホントに、世話が焼けるんだから」
ぎゅっと、俺の身体に回る細い腕に力が込められた。
夕日に照らされたふたりの影が、アスファルトにまるでひとりの影みたいに、伸びていた──────。
「泣かないから」【一紀×美涼】
*END*