初恋シグナル~再会は恋の合図~
私はそう思ったけれど、口には出さずに事の成り行きを見守ることしかできない。
ここで私が何か言ったところで事態が改善するわけでもない。
むしろ、こじれさせてしまうことになる。
「……それ、本気で言ってんのか?」
「だったらなんだよ」
「……分かった。もうあんたにはパス出さねぇから」
それで話は済んだ、でも言うように、辻村くんは、はぁ、とひとつ息を吐くと相手に背を向けた。
「はぁ!?」
だけどそれで話が済むわけがなく、周りがざわめく。
それはそうだ。
辻村くんが今「パス出さない」宣言をしたのは、うちで一番得点力のあるFWだったんだから。
3年生の先輩に対してそんなふうに文句を言うだけでもとんでもないことなのに、辻村くんはそんなことは微塵も考えていないようだった。