not ANGEL but BENUS
こんな時だからこそかもしれない。つり橋効果っていう安っぽいやつかもしれない。何にせよ、跳ねた事実に変わりは無い。


この瞬間、僕は「被害者面して泣き叫びながら機動隊の方へ駆ける」という選択を…捨てた。安っぽい感覚に、身を委ねた。存外、良い気分だった。捨てることに快感を覚えるなんて、変だ。中途半端に生きてきた分、そのバラバラになった道を一つに束ねるのがたまらないのだろうか。


「…逃げんぞ立てよ!!」


「逃げるって何処へ!?戦わなきゃ殺されるのに!!」

「はぁ!?戦うってなんだよ!?ここいたらぶっ殺されんの目に見えてんじゃねーかよ!!オレは逃げんぞ!!」

「そんなっ……」

そんな愕然とすんなっての……僕はなんだ?あれか?救世主ってヤツか?

意味が解らなすぎてちょっとキレそうになった。キレた。


「うるせえ!!見ず知らずのヤツにつられて死ぬなんて真っ平ゴメンだ!!」


さっきまで死ぬ死ぬともがいてたヤツがそれを吠えるか、なんて自分で突っ込んだけど、棚に上げておいた。



「死にたいなら勝手に死ねよ!!ボクは知るかっ!!流流流が死にたいなら死ねっ!!」


あ…素でボクって言ってしまった。ちょっと後悔。


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