平凡じゃ、だめですか?
留萌の町は寒く、町全体が生臭いような気がした。
常に空はうす曇り、朝も夕もどこに太陽があるかわからない。
詠子が車に乗り込むと、フロントガラスにはびっしりと雪の結晶が張り付いていた。
エンジンをかけてからもう5分は経つと思うが、吐く息は白い。
ハンドルはまるで、氷の塊のように冷たく、手袋からも冷たさが、しん、と凍みこんでくる。
早朝6時。
まだ外は暗い。
少し、車を暖めてからじゃないと、発車できない。
というより、先に車の雪を落としても、張り付いた氷が落とせないと前が見えない。
削るより、溶かさないと。