君に捧ぐ、愛の唄
―学校―
「……」
昼休み、私、宮川若菜(みやかわ わかな)は物陰から一人の男の子を見ていた。
まだ春の、あまり人が近寄らない進路相談室。
そこで彼は、何をするでもなくただ、窓から空を見上げていた。
櫻井智哉(さくらい ともや)
顔を隠すように、己と世界を隔離するように、長く伸ばされた前髪。
しかし前髪の隙間から覗く目が、すっと高い鼻が、彼の端正な顔立ちを物語っていて。またその前髪も、彼の独特な雰囲気を助長させ、見るものを惹きつける要因であった。
そんな、一般的にかっこいいと言われる部類の彼を見ている理由は、恋愛感情などではなく、ただ知りたいから。
「…あのっ」
意を決して、私は彼の前に飛び出した。