明日なき狼達
「澤村、抜け駆けは無しにしようぜ」
二人だけになった時、浅井が突然そう言って来た。何も言わない澤村に、浅井は、
「図星だったか……」
と言った。
「俺はとことん付き合うぜ」
「浅井……」
「あの元気なオバサンが言ってたけど、ほんと、安っぽい任侠映画みたいだな」
「今時、Vシネだってこんなクサイ展開はねえよな」
「まったくだ。ところで、現実問題としてどうすんだ?」
実は澤村にも、具体的にどう立ち向かって行くべきかの考えが纏まっていなかった。
「いっその事、滝沢を殺っちまうか……」
浅井が言った事に対し、澤村は肯定も否定もしなかった。
その考えは、常に頭の片隅に、選択肢の一つとして存在していた。だが、今となっては、そのチャンスは当分望めなくなってしまったと思っている。
横浜港でダイヤを奪う前なら、警戒も通常レベルだが、今は、間違い無く厳戒体制を敷いている筈だ。
吉見は恐らく始末されたであろうが、松山達の事を血眼になって捜してる間は、身辺に近付くのは容易な事ではないだろう。
浅井は、澤村の表情から、それを察した。
「狙う者の方が狙われる者よりも強いんだぜ……」
「……」
「お前の好きな『仁義なき戦い』の中での文太の台詞……」
二人は顔を見合わせて笑い始めた。
「だな……」
「そう」
「だが、念入りに下調べしないと……」
「ああ……。奴と内調がシンネコの関係だと判ったからには、その辺も充分頭に入れた上でやらなければならない。身元の確かな奴をかき集めて、滝沢の行動パターンを調べさすか」
「そうだな。互いの身内や若いもんを使わない方がいいだろう。万が一の時を考えた場合、西尾の頭の所に迄迷惑が掛かる」
「自分に心当たりがあるんだ」
浅井は電話を掛け始めた。
「……俺だ。今、電話大丈夫か……いや、ちょっと頼みたい事があるんだ……恩に着るよ……ああ、判ってる、じゃあ……」
ものの一分足らずで話しは終わった。
「どんな人間を?」
「中国人さ」
浅井はそれ以上は言わなかった。
二人だけになった時、浅井が突然そう言って来た。何も言わない澤村に、浅井は、
「図星だったか……」
と言った。
「俺はとことん付き合うぜ」
「浅井……」
「あの元気なオバサンが言ってたけど、ほんと、安っぽい任侠映画みたいだな」
「今時、Vシネだってこんなクサイ展開はねえよな」
「まったくだ。ところで、現実問題としてどうすんだ?」
実は澤村にも、具体的にどう立ち向かって行くべきかの考えが纏まっていなかった。
「いっその事、滝沢を殺っちまうか……」
浅井が言った事に対し、澤村は肯定も否定もしなかった。
その考えは、常に頭の片隅に、選択肢の一つとして存在していた。だが、今となっては、そのチャンスは当分望めなくなってしまったと思っている。
横浜港でダイヤを奪う前なら、警戒も通常レベルだが、今は、間違い無く厳戒体制を敷いている筈だ。
吉見は恐らく始末されたであろうが、松山達の事を血眼になって捜してる間は、身辺に近付くのは容易な事ではないだろう。
浅井は、澤村の表情から、それを察した。
「狙う者の方が狙われる者よりも強いんだぜ……」
「……」
「お前の好きな『仁義なき戦い』の中での文太の台詞……」
二人は顔を見合わせて笑い始めた。
「だな……」
「そう」
「だが、念入りに下調べしないと……」
「ああ……。奴と内調がシンネコの関係だと判ったからには、その辺も充分頭に入れた上でやらなければならない。身元の確かな奴をかき集めて、滝沢の行動パターンを調べさすか」
「そうだな。互いの身内や若いもんを使わない方がいいだろう。万が一の時を考えた場合、西尾の頭の所に迄迷惑が掛かる」
「自分に心当たりがあるんだ」
浅井は電話を掛け始めた。
「……俺だ。今、電話大丈夫か……いや、ちょっと頼みたい事があるんだ……恩に着るよ……ああ、判ってる、じゃあ……」
ものの一分足らずで話しは終わった。
「どんな人間を?」
「中国人さ」
浅井はそれ以上は言わなかった。