明日なき狼達
 浅井の自宅に向かったのは、まだ陽も昇りきらぬ朝早くであった。

 念の為、わざと遠回りし、尾行が無いかどうかを確認して、何時もの倍近い時間をかけてから浅井の自宅マンションに入った。

 普段のダークスーツではない、ラフな格好に二人共なっていた。

「一応、足の付かないやつを見つけて置いた」

 そう言って浅井が手渡して来たのは、見た事の無いような形の拳銃であった。

「……?」

「自家製の改造拳銃だが、殺傷能力は普通にある。俺の古くからの知り合いで、この手の物を作らせたら、間違い無く日本一の人間なんだ。こいつの威力は俺自身が確認済みだ。心配無い」

 自ら操作の仕方を見せた。本物と同じように弾倉を装填し、遊底をスライドさせて、薬室に一発目の弾丸を送り込むのだが、安全装置は付いていない。銃身が普通のオートマチック拳銃に比べてかなり長めで、見た感じ、SF映画に出て来そうな未来的な形をしている。形だけ見ると玩具みたいな感じがした。

「試して見るといい」

 と浅井は言って、分厚い電話帳を二冊ベッドの上に置き、更に銃口を掛け布団で塞いで澤村に撃ってみろとその改造拳銃を持たせた。言われるままに、澤村は電話帳に向けて引き金を引いた。

 ズンッ!

 という鈍い音とともに、

 バスッ!

 という着弾音がし、電話帳に異様な形で穴が開いた。

 グシャグシャに引き裂かれたような穴が、二冊目の裏に迄開き、貫通した弾丸はベッドマットの中で止まっていた。撃った時の衝撃は、普通の自動拳銃より少なく、全然ぶれない。

「すげえな……」

「ガキの頃からのガンマニアで、初めはモデルガンの改造をしていたのが、こうしてオリジナルの自前を作るようになったって奴なんだ」

 改めて弾丸を見ると、弾頭に切れ込みが入っており、平らになっていた。

「何でも、こういう形にしておくと、人間の体内に入った後、簡単に貫通せず、ぐるぐる回るそうだ。それこそ内臓なんかぐちゃぐちゃのミンチにされちまうらしい。薬莢の火薬の量迄きっちり調節してある。相手を確実に仕留めたいんだって言ったら、こんなもんを作りやがった」

 銃の他にサバイバルナイフを鞘ごと浅井は手渡した。

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