明日なき狼達
「ギャッ!」
部屋の中迄、後身体半分というところで、母親が撃たれた。右胸に大きな血の染みが広がり始めている。
何とか中に入る寸前、今度は母親の足に弾丸が命中した。鈍い音と共に、血飛沫が飛び散り、辺りを凄惨な状況にしている。
漸く部屋の扉を閉め、鍵をロックした。扉に激しい金属音がした。
「浅井!」
「俺は大丈夫だ、たいしたことない!」
浅井が、言葉にせず顎でそっちはと聞いて来た。
澤村が母親の口と鼻に手を当て、呼吸を調べる。息をしていない。今度は首に手をやり、頸動脈に触れてみた。
浅井に向かって首を横に振った。
浅井はケータイで助けを求めた。
「黄の野郎、裏切りやがった……」
「そんな事より、此処から逃げ出さなきゃ」
澤村の言葉に頷いて、浅井はバルコニーの方へ向かった。
バルコニーの戸を開けたと同時に、上から跳び降りて来た男と銃の撃ち合いになった。一瞬早く浅井の銃が火を吹き、男はのけ反ってそのまま外へ転落した。バルコニーに何発もの銃弾が集中した。
「畜生!駄目だ」
泣きじゃくる子供を風呂場に一先ず隠し、澤村は別な部屋へ入って行った。
寝室の窓を見ると、足がぶら下がっているのが見えた。その足が窓ガラスを蹴破ろうとした瞬間を見計らって、澤村は撃った。
遠くからサイレンが聞こえて来る。
マンションの住民の誰かが、110番通報したのだろう。
浅井が側に寄って来た。
左腕が完全に利かなくなっていて、時々顔をしかめている。かなり出血もしている。
「浅井、弾丸残っているか?」
銃から弾倉を外し、二発残っているのを確認し、指を二本立てた。
「俺は一発だ」
「お巡りが来てはい、御用ってやつか……」
浅井が自嘲気味に言った。
サイレンの音がすぐ近く迄になった。
澤村はふと、自分の時計を見た。最初の銃声から此処迄、思いの外時間が掛かっていない。
この辺りの所轄は四ツ谷署……
緊配のパトカーが回されたとしても、この時間帯の道路は渋滞だ。
早過ぎる……
滝沢……
警察官僚をも動かす男……
「逃げるぞ!」
部屋の中迄、後身体半分というところで、母親が撃たれた。右胸に大きな血の染みが広がり始めている。
何とか中に入る寸前、今度は母親の足に弾丸が命中した。鈍い音と共に、血飛沫が飛び散り、辺りを凄惨な状況にしている。
漸く部屋の扉を閉め、鍵をロックした。扉に激しい金属音がした。
「浅井!」
「俺は大丈夫だ、たいしたことない!」
浅井が、言葉にせず顎でそっちはと聞いて来た。
澤村が母親の口と鼻に手を当て、呼吸を調べる。息をしていない。今度は首に手をやり、頸動脈に触れてみた。
浅井に向かって首を横に振った。
浅井はケータイで助けを求めた。
「黄の野郎、裏切りやがった……」
「そんな事より、此処から逃げ出さなきゃ」
澤村の言葉に頷いて、浅井はバルコニーの方へ向かった。
バルコニーの戸を開けたと同時に、上から跳び降りて来た男と銃の撃ち合いになった。一瞬早く浅井の銃が火を吹き、男はのけ反ってそのまま外へ転落した。バルコニーに何発もの銃弾が集中した。
「畜生!駄目だ」
泣きじゃくる子供を風呂場に一先ず隠し、澤村は別な部屋へ入って行った。
寝室の窓を見ると、足がぶら下がっているのが見えた。その足が窓ガラスを蹴破ろうとした瞬間を見計らって、澤村は撃った。
遠くからサイレンが聞こえて来る。
マンションの住民の誰かが、110番通報したのだろう。
浅井が側に寄って来た。
左腕が完全に利かなくなっていて、時々顔をしかめている。かなり出血もしている。
「浅井、弾丸残っているか?」
銃から弾倉を外し、二発残っているのを確認し、指を二本立てた。
「俺は一発だ」
「お巡りが来てはい、御用ってやつか……」
浅井が自嘲気味に言った。
サイレンの音がすぐ近く迄になった。
澤村はふと、自分の時計を見た。最初の銃声から此処迄、思いの外時間が掛かっていない。
この辺りの所轄は四ツ谷署……
緊配のパトカーが回されたとしても、この時間帯の道路は渋滞だ。
早過ぎる……
滝沢……
警察官僚をも動かす男……
「逃げるぞ!」