明日なき狼達
 じっと皆のやり取りを見ていた児玉が、浅井の側ににじり寄り、耳元に話し掛けた。

「どうでしょう、浅井さんが私達を滝沢の元に連れて行くというのは」

「……?」

「相手の懐に飛び込めばやりようがあると思うのですが」

「飛び込むったって……」

「勿論、裸で行く訳じゃありません。それなりに準備はして行きます。浅井さんの方でも後詰めを出して頂ければ」

「何をどうすると?」

「澤村さんが生きて捕らえられていれば、救出も出来ますし、そうじゃないにしても、本来の目的であった滝沢の廃除を私達の手で行える」

「しかし……」

「確かに私達は見ての通り老いぼれです。だからこそ敵は油断もする。それに、滝沢は私達を捜している。私達を連れて行く浅井さんは、捜索を命じた親栄会の人間……仮に澤村さんとの関係を疑われたとしても、それならとっくに命を狙われている筈です。どうです?」

 二人の会話を聞いていた松山は、浅井の手を取り、

「老いぼれと言っても、チャカの引き金を引くだけの力は残っているぞ……」

 と言った。

「おいっ、俺達だって居るぜ」

 神谷が野島の言葉に頷いている。

 梶と加代子の二人は呆れ返ったような表情をしている。

「児玉さん、あんた元自衛隊だかレンジャーだか知らないが、100メートルもまともに走れない私達に一体何が出来ます?
 子供の戦争ごっこじゃないんだ。現実に横浜じゃ神谷が足を撃たれ、野島さんにしても指を失う程の大怪我をしてるんですよ」

「そうよ」

 児玉は二人に向き直り、ぴんと背筋を伸ばして言った。

「ちゃんとそれなりの武装をして乗り込みます」

「武装?武装って何なんだよ。確かに浅井さんに頼めば拳銃の何丁かは手に入るだろうが、まともに人なんか撃った事の無い私達なんですよ」

「手配すれば猟銃も手に入りますよ」

「浅井さん、武器は別な所から調達します。我々が敵に劣っているのは、人数と若さかも知れませんが、それを補えるだけの武器を手にすれば、充分戦えます」

「武器の調達って、何処から?」

「自衛隊駐屯地……」

 児玉の言葉に、流石に皆目を剥いた。



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