明日なき狼達
「軍隊が使う武器と、暴力団風情が手にしている武器とでは、それこそ天と地程の差があります。仮に相手側に郷田が居たとしても、せいぜい手にしている武器はオートマチックの拳銃やナイフが関の山でしょう。自動ライフルや機関銃、更には手榴弾で武装して行けば」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!
 そんなもんを自衛隊の駐屯地から調達って、盗む訳でしょ?
 捕まったら重罪ですよ。よしんばそれに成功したって、それで相手を撃ったら殺人罪だし、他にも凶器準備集合罪や騒乱罪……」

 梶の言葉を遮るようにして野島が、

「何、眠い事言ってんだよ。俺達は既に横浜で犯罪を犯してんだぜ。つまらねえ法律の話しなんか持ち出したって、こっちが向こうに殺られたら終いなんだよ」

「そうですよ。凶器準備集合罪なら、俺達の十八番だったじゃないすか」

「か、神谷、あんなのは学生の遊びで……」

「やりたくない人間を当てにする必要は無いでしょう。俺達だけでやりましょう」

 松山の言葉に梶は怒りを表した。

「やりたいとか、やりたくないとかの問題じゃない!
 物事を一つの方向からだけじゃなく、様々な角度から見て答を決めたって遅くないって言ってるんだ。私は、私はもう無駄な抵抗で犠牲を出したく無いんだ!」

 何時に無く激しい口調で論じる梶だった。

「神谷、お前あの頃の事を思い出して見ろ。革命を信じて集まった俺達の果ては何だった?残ったものは?ただの挫折じゃなかったか?
 権力に立ち向かう事がファッションみたいな時代に生きていたというだけなんだよ」

「あのさ、ジジイ達が何を興奮してんだかわかんないけど、此処にもう一人当事者が居るんだよ。あたしも一緒とか言う訳じゃないよね?」

「姐御は後方待機だ」

 神谷が冗談っぽく言う。

「梶さん、難しい話しは自分には判りません。ただ、男として、最後位誇り高く迎えたいって事なんです。自分の、俺の生様ですから、梶さんにそれを押し付ける気持ちは毛頭ありません。梶さんは、梶さんの信じる道を歩かれれば良い」

「そういう事だな。神谷さん、梶さんと加代さんは人数に考えず、俺達だけでやりましょう。で、児玉さん、どう調達するんです?」

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