明日なき狼達
 敷地内をカーゴが猛スピードで走る。

 遠目にその様子を目にした自衛隊員達は、おかしいとは思いながらも、まさか武器庫が襲われたとは思いも寄らない。

 ヘリコプターの発着場を横切り、浅井との合流地点迄ひたすら松山はアクセルを踏み続けた。

 児玉がケータイで浅井に、

「もう間もなく合流出来ます」

(こちらから児玉さん達の車が見えます)

「では、手筈通りお願いします」

 そう指令された浅井は、若い者とトラックから降り、大型の金属カッターを取り出した。

「オ、オヤジ、大丈夫ですか?高圧電流とか流れてるんじゃ……」

 金網の上には危険の文字が書かれた看板がある。

 浅井達の100メートル左横に、変電施設があった。間違い無く金網には侵入防止用に高圧電流がそこから流れているに違いない。

 児玉達のカーゴが変電施設の前で一旦止まった。

 児玉は武器庫から奪った手榴弾を手にして降りた。

 変電施設を取り囲んでいる金網は3メートルばかり。

 児玉は距離を測り、手榴弾の安全ピンを抜いた。そのまま変電施設の中心部に向けて投げ入れた。

「急いでぇ!」

 加代子の声が響く。

 児玉が乗り込むと同時に松山はアクセルを踏み、それと殆ど同じくして手榴弾が爆発した。

 たった一発の手榴弾だったが、高圧電流が流れていたから、その爆発は凄まじい音と火花を辺りに轟かせた。

 カーゴの中に迄爆発の熱風が吹き込んで来た。

 変電施設の爆発を見た若い者はすぐに、金網を切断しようとした。

「待てっ!」

 浅井が若者を制し、車のグローブボックスからスパナを取り出して、それを金網に投げつけた。

 異変は無かった。

「よしっ!」

 大型カッターで金網を切断して行く。気持ちばかりが焦り、思うようにはかどらない。

 敷地内からは、サイレンが間断無く鳴らされている。

 児玉達を乗せたカーゴがやって来た。

 金網はまだ半分程しか切断されていない。時間がものすごく長く感じる。

 敷地内の建物から大勢の隊員が出て来ている。こっちに向かって来るジープやカーゴが見えた。

「来たわよっ!」

 松山は皆を金網から離れさせ、カーゴに乗り込んだ。


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