明日なき狼達

救出

「さて、もう一度銃の扱い方を練習しましょう」

 児玉がそう言って皆を近くに寄せた。

 89式自動小銃を一丁取り出し、構えた。

「引き金の左上、ここです。この小さなレバーを一番上にしたままですと、安全装置が掛かって実弾は出ません。こう構えると、丁度右手の親指がこのレバーに掛かりますから、撃つ構えをしたまま操作が出来ます。一段下げると、単発での射撃になります。いいですか」

 児玉がそう言うと、野島と松山が古いマットレスを壁に立て掛けた。

 浅井が建物の外を見張っている。

「引き金を引く時は、呼吸を整えて、しっかり左手で銃身を支えて下さい。後はこのように……」

 と言って児玉が引き金を引くと、ターンッと乾いた音と同時に、立て掛けたマットレスに弾丸が命中した鈍い音が響いた。

 弾丸は余りにも至近距離過ぎたので、発射スピードが最高点に達する前に命中した為か、思った程の威力を見せはしなかった。が、それでもマットレスを貫いた衝撃と状態は、初めて見る者には充分過ぎる程の威力を示していた。

「次に、このレバーを一番下迄下げると、一回引き金を引く毎に三発の弾が発射されます。行きますよ」

 と言って再度引き金を引くと、先程よりは一段高い銃声と着弾音が部屋中に鳴り響いた。

 マットレスはズタズタになり、当たった場所がぽっかりと大きな穴になっていた。

 児玉は野島達に89式を渡し、一回ずつ試し撃ちをさせた。

「取り敢えず扱い慣れる事を念頭に入れて下さい。自分を守ってくれる大切なパートナーになるのですから」

 加代子は射撃音で周囲に気付かれないかを心配したが、浅井が、

「この辺は埠頭の倉庫街ですから、そう気にする事はありません」

 と言った。

 最初は恐る恐る射撃をしていた皆だったが、一度実弾を撃ってしまうと、その緊張感も解けた。最後に拳銃の扱いと、手榴弾の投げ方を教えた。

「男は幾つになっても、そういう玩具を手にすると子供みたいになっちまうんだね」

 加代子の言葉に児玉は苦笑いするばかりだった。

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