明日なき狼達
 廃屋から出て来た男達の手には拳銃が握られている。

 児玉は荷台の中でタイミングを計っていた。

 浅井が自分のブローニングの安全装置を外し、遊底をスライドさせた。

 荷台の幌が上げられ、屈強な男が全員に降りろと命じた。

 浅井が先ず降りた。

 手に縄を巻いたまま、児玉が続き、運転席から浅井の若い者が真っ青な顔で二人を庇うかのように走り寄って来た。

 児玉は取り囲んでいる人数を数えた。

 郷田を含めて10人。建物の中に一体何人居るのだろうか。中に入る前に銃撃戦になったら、一瞬のうちに倒さなければならない。

 郷田の姿を探した。

 郷田は建物の入口付近で、こちらを遠巻きに眺めている。

 児玉は彼の目をじっと見つめた。最大の相手は郷田だ。彼の動きを絶対に見逃してはいけない。

 児玉の視線に気付いた郷田は、訝し気な表情をしている。

 荷台から最後に神谷が降り、担架を引きずり出そうとすると、近くに居た男が神谷の胸倉を掴んで来た。その拍子に腰に差していた拳銃が露になった。男は拳銃を目にし、一瞬不思議そうな表情をした。

 瞬間、あっ!と声を上げ、神谷を突き飛ばした。

「ピ、ピストルを……」

 そう声を上げたと同時に男の顔面に小さな血の穴が轟音と共に出来た。

 児玉が両手の縄を外し、腰の拳銃を抜き打ちに男に放ったのである。

 ドサッという音を立て、男が倒れると、野島達も縄を外し腰の拳銃を抜いた。

「伏せるんだ!」

 児玉が絶叫し、続け様に拳銃を撃った。浅井の若い者も撃ち始めた。

「トラックの陰に隠れて!」

 神谷が不自由な右足を引きずりながらタイヤの陰に隠れる。

「ギャッ!」

 浅井の若い者が撃たれた。あっという間に地面に血溜まりが広がる。

 凄まじい音が耳をつんざいた。

 連続する発射音の方を見ると、梶がイングラムを手にして凪撃ちにしていた。

 児玉は郷田に向かって銃を向けた。

 もう一人の浅井の者が撃たれた。撃ったのは郷田であった。

「郷田ぁ!」

「児玉一佐……」

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