明日なき狼達
 林の方で待ち伏せしていた滝沢の手の者達は、児玉と松山が殆ど倒した。

 野島が玄関から建物の中に入ろうとした。

「気を付けて!」

 児玉の言葉が言い終わらないうちに、内部の至る所から銃弾が飛んで来た。ガラスが割れ、着弾した壁のコンクリートの破片と共に降り注いで来る。顔や手など、露出した部分にそれらの破片で傷が無数に出来て行く。

 建物内部からの銃撃は凄まじかった。

 神谷は足が竦み、顔も上げられない。壁に張り付き身を縮こませるばかりだ。

「行くぞっ!」

 梶が突然立ち上がり銃を乱射し、前方に見える階段へ走り出した。

「か、梶さんっ!」

 慌てて神谷も銃を撃ち続ける。

 浅井が撃たれた腿をズボンのベルトで縛り付け、玄関の柱を盾にしている。

「児玉さん!自分は此処で外の残りの敵を食い止めます。皆さんと一緒に中へ!」

「判りました」

 浅井の足の状態を見た児玉は、彼に手榴弾と予備弾倉を渡し、松山を促しながら中へ入って行った。

 梶が叫びながら銃を乱射している。

 神谷も涙目になりながらも応戦していた。

「皆さん、もっと頭を下げて!」

 児玉の指示など届かない。

 松山が壁沿いに進み、一部屋毎に手榴弾を投げ入れて行く。

 室内での爆発音は凄まじい。吹っ飛ばされた扉や破片と共に、数人の人間が悲鳴を上げて廊下に転がって来る。そこを野島が容赦無く銃弾を撃ち込む。

 階段の踊り場に居た敵が倒されると、

「野島さん達は上の階を、私と松山さんで地下を行きます!」

 と指示し、二手に別れた。

 児玉が自ら先頭になり、地下へ向かう。

 左右に別れた長い廊下。何処から敵が出て来るか判らない。上では、野島達の撃つ射撃音が時々する。

 松山と互いに背中合わせになりながら、前方と背後を警戒しながら進む。

 松山が澤村の名前を呼んだ。

 廊下の両脇に並ぶ部屋の扉が、普通の病室とは違うものを感じさせた。

 まるで刑務所の独居房を思わせる。

 居る……

 間違い無く澤村はこの部屋に捕われている筈だ……

 松山は確信した。

 足音が……?

 全身に緊張が走った。

 同時に児玉の銃が火を吹いた。
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